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* 暗礁、波がうまれるところ
大事なことこそ口にできない。
わたしにとってのだいじなことは自分にとってのみ重要で、まわりのひとには重要じゃないかもしれないと飲み込む。
ほんきで話そうとしたら勝手に涙も出る。
だからいつも悪いことは言わない。悲しいことは言わない。
きっとそれによって素敵なことも半分も言えていないんだろう。

誤解だったらときたいし、わかってほしいと思う。
そんなの嘘なんだから信じないで、とも思う。
けれど同時に今まできちんと信頼関係を築いてこれなかった自分の責任も思う。
信頼関係があれば私の「つもり」も聞いてくれたかもしれない。私も話せたかもしれない。
そしてその途端諦めてしまう。
頑張ってきたつもりも、誰にもそうと認められなかったらただの思い込みかもしれない。
話す猶予をたっぷりもらわないとなにも話せないし、話さなくてもいいと思ってしまう。
時間的にも、信じてくれているという気持ちの上でも。

私はこういうつもりで、こういう風に考えて行動したんです、と弁解すればいいのにと思う。
でも色んな理由にがんじがらめにされて動けない。
言い訳をするまい、と思うと大事なことまでいえなくなる。
理不尽なことをされたら爆発すればいいのに。
けれどそこにも本気が要る。
その理不尽さに自分の本気を使う気にはとてもならないのだ。
そしてその理不尽さを真に受けるひとに、自分を弁解しようとは思えなくなる。
傲慢かもしれないけれど。
本気で接したいひとにしか怒れない。
本気で接したいひとにしか私は傷つけられない、と思っているからかもしれない。


けれどやっぱりやりきれなくて電車を降りてから友達に電話をしてしまった。
友人宅に行く途中の道は帰宅のひとがいっぱい通行していたのだけれどどうしても泣くのをやめることができなくて何度も沈黙して、何度も同じ道をぐるぐる歩いた。
どんなに辛くても誰にも話さないのは、泣かずにうまく話せる自信がないからだ。
わたしが急に頼っても迷惑にならない信頼関係をちゃんとつくってきたかが心配になるから、というのもあるけど。
わたしのこころは案外やわらかくて、ちょっとしたことですぐにかたちを変える。
辛抱強いと思っていたのに、案外すぐに涙が出るし。
赤ちゃんを見ても泣いてしまう。
怒っても泣いてしまう。
大切なもののことを思うだけでも。
ちょっともどかしくても。
情けなくても。


お世話になってきたひと、可愛がってくれているひとに恩返しができるまでは、などと思っていた。
でもいつのまにか周囲に迷惑をかけている状態に自分が慣れてしまっていたのかもしれないな。

+

まわりのひとに気をつかおうとしているのか、ただ気が弱いだけなのか。
あんまりにも自分がわからなくて、ふわふわと確定できない。
わからないと思いすぎなのか、入り込みすぎたのか、ただの修行不足なのか、それすらもわからない。
なぜ、なぜ、って訊く子供みたいに。

でも友人に言わせると踊るときはそうじゃないそうだ。
受身だったり後手だったりするばかりのわたしではない。
きっと、踊っているときが一番ただのわたしでいられるんだろう。
いつからこんなに始終緊張しているようになったんだろうか。